「名詞+だったら」の成立要件
先日こんな質問を留学生から受けました。
「先生、『パソコンが故障だったら買い換えます』という言い方は正しいですか?」
いい質問ですね。「名詞+だったら」は成立するものとしないものがあります。
・病気だったら、あのことだったら、先生だったら、パソコンだったら、私だったら
これらは問題ありません。ただ、「掃除」「勉強」「復習」などのように、スルを付けて動詞にすることができる名詞(動作名詞)については、やや注意が必要です。例えば以下のような場合は動作名詞でもそのまま「だったら」が付けられます。
・部屋の掃除だったら、国語の勉強だったら、数学の復習だったら
ところがこれらの名詞を動詞化した場合必要となる格(ヲ格)がそのまま使われている場合、「だったら」は付けられません。(例文の前についている「*」は非文法的であることを表します)
・「部屋を掃除する」→「*部屋を掃除だったら」
・「国語を勉強する」→「*国語を勉強だったら」
・「数学を復習する」→「*数学を復習だったら」
「だったら」はあくまで「たら」が名詞やナ形容詞に接続する際の形ですから、動詞性が出てくると不適格となります。ヲ格がついて動詞として使用されている場合は、「たら」にする必要があります。
・部屋を掃除したら
・国語を勉強したら
・数学を復習したら
さて冒頭の留学生の質問に戻りましょう。「パソコンが故障だったら」という例はどのようなプロセスで生じたのでしょうか?おそらく以下のようなものだと思います。
①「もし(if)」+「パソコンが故障(computer broke」はなんていうんだろう?
②「もし」がついたら「たら」を使うな。
③「故障」は名詞かな?動詞かな?まあ名詞かな?
④名詞の場合は「だったら」だな。
⑤じゃあ「パソコンが故障だったら」かな?
という具合でしょうか。あくまで予想ですが。
日本語の品詞は、同じ語でも、名詞になったり動詞になったり、名詞だと思ったら形容動詞になったりと、とてもややこしいです。そして留学生は迷ったらとりあえず名詞として考える傾向があります。ですから「パソコンが故障だったら」という表現が生まれたのだと思います。
当該の学生にはもう少しわかりやすい言い方で上記のようなことを説明しました。(たぶんわかってくれたと思います)
普段我々が何気なく使っている日本語も、留学生からすれば謎だらけです。日本人だって改めて考えてみるとわからないこともたくさんあります。みなさんも是非普段から日本語の構造や仕組みに注目し、「なぜこうなっているんだろう?」と疑問をもっていただけたらと思います。
(鈴木基伸)
