文法的な知識から日本語教育の現場へ
こんにちは。梅野です。日本語教員試験を受けたみなさん、お疲れ様でした。そして、日本語教員試験に関するアンケートに答えてくださった皆様、本当にありがとうございました。沢山の方にお答え頂いて、本当に感謝しております。当初は数名の方に限ってメンバーシップ限定のオンライン講座へご招待しようと思っていたのですが、お答えいただいた方全員を招待しようと思います。第1回講座テーマは日本語学校模擬授業で課される初級文法中級文法とは具体的にどの文型か、そして、模擬授業として成立しやすいものしにくいもの、合格のためのコツなど諸々お話しします。
さて、日本語教員試験の応用試験を受けた皆様から知識だけではなくそれを授業にどう活かすかという問題が出たというお声をたくさんいただきました。応用試験ですから、知識から運用ということを問う問題は良問だと思います。
そこで、今日とりあげたいのは、アスペクトです。アスペクトといえばテイル形に焦点が当てられがちですが、実は他の文法要素にももちろん関わっています。
アスペクトは一般的に完了、未完了を表す文法要素です。「彼は今走っている」のアスペクト的意味は現在進行中を表しているので未完了ですよね。他にも「するとき(したとき)」「する前」「した後」など時点を表す従属節でのタ形とル形は原則としてアスペクトを表します(絶対テンス相対テンスとされることもありますが、私はアスペクト派です)。タ形は動作の完了を、ル形は動作の未完了を表しています。
①寝る前に歯を磨きました。(「寝る」という動作は未完了、文全体の時制は過去)
②ご飯を作った後で子供を起こします。(「ご飯を作る」動作は完了、文全体の時制は非過去)
③ご飯を食べる時、スプーンを使いました。(「ご飯を食べる」動作は未完了、文全体の時制過去)
②は「みんなの日本語」第30課に出てきます。(30課では「私が言ったとおりに」という従属節も出てきます)③は「みんなの日本語 」23課にできます。
さて、日本語の時を表す従属節の動詞の形式はアスペクトによって分けるという知識が、どう活きるかと言いますと……
みなさん、英文法を勉強したときに、「時制一致」を勉強しましたよね?
④ごはんを食べる時、スプーンを使いました。
⑤I used a spoon when I ate
④を直訳した場合、⑤になります。英語は主節の時制と従属節の時制を一致させなければならないの従属節も過去形を取ります。英語は主節の時制によって従属節の時制が決まるのに対し、日本語の従属節は主節の出来事が成立するときに完了か未完了かであるかによって決まります。つまり、英語母語話者は④「ごはんを食べた時スプーンを使いました」「寝た前に歯を磨きました」などのような文(文末が、過去なら従属節も過去のような文)を作りやすいと予想できます。そこで、私たち日本語教師は英語母語話者に時を表す従属節を教える際、日本語は完了未完了で形式を分ける必要性があることを意識的に導入したほうがいいことがわかりますね。
実際、英語母語話者で「寝た前にシャワーを浴びました」というような誤用をすることが多いです。このような、文法的知識から実際の日本語教育の現場にどう活かすかということをYouTubeの文型分析でお話ししようと思ってます!
手でガムをおさえて食べるちくわ君です。

